『キコニアのなく頃に』の感想<ネタバレ注意>

※下へ行くほど『キコニアのなく頃に』の重要なネタバレがあります。未プレイの方は注意してください。

 

「どうでした、『キコニアのなく頃に』は?」

「面白かった・・・。クリアして3日、いまだに余韻冷めやらぬ。個人的には竜騎士07最高傑作」

「まだ『phase 1』ですよ?」

「それでこんだけすごかったらもう文句ないわ・・・」

「戦争がテーマでしたね」

「何かのたとえで戦争を描いた作品は数あれど、エンタメで戦争そのものをここまで考えようとした作品は最近なかったんじゃないかな?脱帽だった」

「それで、どういう作品なのかちょっと説明してくださいよ」

「この作品は、第三次世界大戦が起こって、それから人口が100億人まで回復した近未来の地球が舞台なんだよ。そんで、そこで起こる第四次世界大戦を食い止めようとする若者たちを描いた作品なんだよね」

「止まるんですか世界大戦?」

「この人の作品で止まると思うか?」

「それでどの辺が『なく頃に』シリーズでした?」

「例えば序盤にこんなセリフが出てくる。【避けるッ、食い止めるッ、回避するッ!絶対に絶対に、あの<地獄>だけは、・・・あの運命だけは、回避するんだ・・・・ッ!】」

「うお最高じゃん!!!」

「超テンション上がった!!!そんで、『うみねこ』みたいに話と話の間に、画面に大きなアナログ時計が出てくるんだよ。それが一章読み終えるごとにカチッてちょっとずつ進むんだよね」

「あの、12時になったら恐ろしいことが起こるやつですね」

「そうそう!そうやって最初は時計が11時50分くらいにセットされてるのが、読み進めるとどんどん運命の時間に近づいて行くんだよ!」

「まさに世界終末時計ですね」

「12時の時計が鳴った次の章が滅茶苦茶怖かったわ。音楽も最悪だった。・・・夢に見るわ」

「あれは気持ち悪すぎましたね!え?そっちも!?うわー・・・ってなりました」

「夜中に部屋暗くしてヘッドフォンしてやってたから思いっきり食らったわ。でもこれが味わいたくて9年待った」

「それじゃあ、『ひぐらし』がとある村での惨劇を描いた作品で、『うみねこ』がとある島での悲劇を描いた作品だとすると、『キコニア』は」

「世界の滅亡を描いた作品だった」

「うひょう!ついにここまで来ましたね!」

「スケールを世界規模にまで拡大してるんだよ!」

「しかし戦争かー。結構テーマ的にハードというか政治的なものも出てくるんでしょう?」

「バリバリ出てくるけど、厨二っぽく書いてあるから面白いよ。最初からこの作品は製作者の政治的意図を込めたものではないってメッセージが出てくるしね。それにこの人の文章は非常に読みやすいし。内容はともかく」

「まあ、中高生とかも読むでしょうからね」

「全年齢対象だからね。それどころか英語に言語を切り替えることもできるから、世界中の人が読めるようになってたわ」

「すげー。本気ですね!」

「同人作品で、この分量でこれはマジですごい」

「ただ信じられないくらい嫌なイメージが出てきますけどね」

「何が全年齢対象だよ」

 

  ★

 

「それで『キコニア』ってなんなんですか?」

「『キコニア』はコウノトリって意味なんだけど、この作品の世界では、多くの子どもは親が生むんじゃなくて、工場で管理されて生まれてくるんだよ。だからアメリカとか分裂した日本の東半分では親っていう存在がいないんだよね」

「ほうほう」

「でも、たまに肉親から生まれてくる子どもがいるんだよ。それが『キコニア』生まれって言われてるんだ」

「子どもが生まれるのを、コウノトリが運んでくるって言いますもんね」

「それがないているから『キコニアのなく頃に』」

ひぐらしがないて、うみねこがないて、今回はコウノトリがなくんですか?」

「つまり人間がないてるのと同じことだよね。主人公の御岳都雄(ミタケミヤオ)くん、キコニア生まれだった」

「その主人公はどんなコなんですか?」

「御岳都雄(ミタケミヤオ)っていう少年(?)で、軍人なんだ。ガントレットっていう最新鋭の軍事技術を装備してるんだよ」

「あのゲームのジャケットで、片腕についているやつがガントレットですね」

「そう。そんでそのガントレットナイトっていう、一人でアメリカの空母に匹敵するような超軍事力を持つ若者が世界中の軍隊にいて、世界の軍事力のパワーバランスを担ってるんだよね」

「なるほど。少年兵の話なんですね?」

「そういうとわかりやすいね」

「それで、戦争はなんで起こるんです?」

「戦争を起こそうとする連中がいるんだよ!」

「誰ですかそれは?」

「わからない謎だらけ。戦争で儲けようとしてるわかりやすいやつらも出てくるんだけど、裏でいろんなやつが暗躍してるんだ」

「人類を滅亡させようとする連中がいるんですね!超王道じゃないですか!」

「とにかくいろんな連中がいろんな理由で、世界大戦を起こそうとしてるんだよ。『ひぐらし』に出てくる鷹野そっくりの女とか出てくるし」

「そいつが絶対、黒幕じゃないですか!!!」

「わからないんだ。ほかにも覆面をした男たちとか、今わかる段階で三つぐらい何らかの理由で人類を滅ぼそうとしてる連中がいるんだよ。しかも、それを防ごうとしてる主人公たちの中にもそいつらのスパイがいるの」

「誰を信じて何をすればいいのやら」

「そんでもって、自分すら疑わしくなってくるんだよ。自分のなかに何かよくわからない自分がいることに気づくんだ」

「まさに五里霧中ですね」

「これぞ、07th expantion!」 

  

「さて。そろそろネタバレが濃くなってきますけど、他にどの辺がよかったですか?」

「やっぱり、戦争っていうテーマに真っ向から取り組んでることだよね。オリンピックみたいな国際軍旗祭とか、各国間の緊張の悪化とか、無責任に戦争をあおる人たちとか、人種差別とか、性差別とか、経済格差とか、異常気象とか、軍事パワーバランスとか、SNSA.I.無人兵器にナノマシンと、現実とどこかしらリンクしてるテーマが山ほど出てくるんだよ!」

「近未来を描くことで、現実を描こうとしてるのって『攻殻機動隊 S.A.C.』とかと一緒ですよね」

伊藤計劃とかね」

「まあ『ひぐらし』でもダム建設とか村八分とかありましたから、最初からそういう社会とか歴史とかとリンクさせる人だとは思ってましたけど」

「でも、よく今のこのご時世にここまで書いたなって尊敬するわ」

「 正面切って平和について考えてるってことですね?」

「そういうこと!」

 「それはちょっと抜きん出てるかもしれませんね」

「この作品で竜騎士07は、俺の尊敬する作家ベスト10に確実に入ったね」

「まあ、あんたそういうの好きですもんね」

「俺は一人で人種差別反対のデモとかに参加してたぞ」

「あなた左翼なんですか?」

「おれは右でも左でもないぞ!俺はロックンローラーなんだ!」

「はいはい」

 

 

 

「さてそんじゃあ、最後に『キコニアのなく頃に』お疲れ様会をやりましょう!」

「ここからは本当に『phase 1』の核心に迫るネタバレの話してるんで、ネタバレ気にしない人だけ読んでねー!」

「お疲れ様なのですー」

「はいなのですー」

「今作にはクリアしても、お疲れ様会とかティーパーティーとかはなかったですね」

「フラグメントっていうミニエピソードはいっぱいあったけどな」

「それにこの作品、ループしてるのかどうかすらわかりませんでした」

「『phase 2』は時間が戻るのか、このまま続くのか?続くとしたら大気汚染や海洋汚染がすごすぎて、地球はもう瀕死のボロボロだぞ?」

「あの最後の戦争終結前に『高地戦』みたいに、ガントレットナイトが壮絶な殺し合いやるじゃないですか!あれ見ました?」

「停戦が決まってからのね!まさに悲劇!」

「あれはヤバすぎましたね!!!生身の身体は互いに戦争しながら、電脳世界ではみんなでクリスマスパーティーやってるっていう」

「その様子がカットバックして進行するなか、挿入歌が流れるんだよ!あれは今思い出しても全身に鳥肌が立つ!」

「号泣でしたね!」

「号泣・・・。素晴らしい」

 「だから映画でいうと『プラトーン』とかも入ってますよね。若者が旧世代に殺されていくっていう」

「キコニアが泣いている」

「ちなみにキャラは誰が好きでした?」

「コーシュカ。あいつだクリスマスパーティーにも無駄な殺し合いにも参加せず、一人で軍部に特攻した。カッコよかったぜ・・・」

「それで何度もいいますけど、ウイルス兵器、大気汚染、水質汚染地震と災害のオンパレードでしたね!次々に襲う地球環境への容赦ない攻撃具合が半端なかったです。ここまで人類を追い込む普通!?」

「災害のお子様ランチって言ってたね。誤解を恐れずに言うけど、それがこのゲームで一番面白かった。竜騎士07おそるべし」

「あの戦争中、クロエはなんでリリャを電撃で動けなくしたんですかね?」

「あれはゾーッとしたわ・・・。まさか、あのクロエが裏切者だったんだろうか?」

「いや、裏切りものは一番最後に写ったジェイデンじゃないですか?あの地下室の青い女たちと一緒の恰好になってたし」

「あれも死ぬほど驚いた、というかショックだった。嘘だろ・・・ジェイデンがスパイだとしたら、もう何を信じていいのやら」

「でもクロエも二重人格者かもしれませんね」

「リリャもある意味で二重人格だったけどな」

「それと御岳藤治郎は、三人の王だけじゃなくて、地下研究所の鷹野みたいな女ともつながりがあったんですね。モナリザの前で一緒になんかやってましたし」

「そうだな。そんで藤治郎は自分の子どもの都雄に一体何をやらせようとしてるんだ?あとあの仮面の女が都雄の母親なんだろうか?そんであいつの目的は一体なんなんだ?」

「人類を救うためなら何人殺しても構わないだろう?とか言ってましたけど」

「もう30億人死んだけどな」

「あのLATOのビーチで世界が崩壊していくなか、くつろぐ藤治郎はすごかったですね」

「セシャトの騎士団の目的も全然わからんし、これもまた地下研究施設に最後行ってたし」

 「でも、あいつらは人類を滅亡させたいように見えて人類を救おうとしてるようにも見えるんですよね。それがまたすごい!」

「三人の王だって人類を1%くらいまで死滅させて、そこから人類再生を願っているとか言ってたしな」

「『火の鳥』かよ」

「しかし、次回の『phase 2』も全く内容がわからない」

「全然、完膚無きまでに予想が立てられない」

「これが、WHEN THEY CRY5 の第一話 “代わりのいる君たちへ”」

「『キコニアのなく頃に』」

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「キコニアのなく頃に」オープニングムービー