北条沙都子の戦い(記録その13)

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写真は、第14話で梨花をランドセルで殴り、田んぼに突き落としたときに散らばった沙都子の持ちものである。カバンのなかにある「新しい理科」に思わず笑ってしまうが、その下の算数の問題集や、几帳面に棒グラフが書かれたノート、右下の算数の教科書を見ると、沙都子が「理数系」の勉強ばかりしていることがわかる。

へー!沙都子、数学が好きなんだ!いいね!!

と、思わず萌えてしまうところだが、みんな落ち着こう。勉強嫌いの沙都子が、これらの教科書が入ったランドセルで梨花を殴打しているので、ここには沙都子のキライなものが入っていると考えるのが普通である。

つまりここでは、苦手なものを必死にやってきたこれまでの過程と、その努力の先にあった「新しい梨花」に対する失望の気持ちが、学校からの帰り道に投げ捨てられているのだ。これは、沙都子がもうこれ以上『家』に帰れないことを意味している。彼女は梨花と一緒に居られないことが、とっくにわかっているのだ。

そして、2度と戻れない場所だとわかっているからこそ、沙都子は『思い出』と一緒に何もかもすべてを破壊しようとするのである。繰り返し繰り返し、何度も何度も自分もろとも『郷を壊す』のだ。

故郷や思い出の否定、つまり『自殺』である。

だが梨花には、それがわからない。梨花はいつでも雛見沢に帰れると思っている。この逆転をこそ、エウアは笑っているのである。

だからこそ沙都子は悲しいし、切ない。

やはりこれから辿る2人の道は、ここで別れてみえた。

 

では、沙都子はこれからどこへ帰ればいいのだろう?

誰がすべてを否定した沙都子を迎えてくれるのだろうか?

もはや誰もいなくなったし、どこにもなくなってしまった。

これまでの自分すらも。

 

・・・ないなら、自分で作るしかないのではないか。

自分で新しい『スイートホーム』を作って、みんなをそこに呼ぶしかないんじゃないだろうか。

すべてがなくなって、鉄平の罪も消えたのなら、沙都子がもう一度迎えに行くしかない。

この北条沙都子の戦いは、そういう『戦い』なのではないだろうか?

 

・・・例えいつか本当の『死』が訪れて、永遠に2人を分つことになったとしても。

願わくば、『R.O.D -THE TV-』のような幸せな『スイートホーム』を、彼女がラストに見つけられんことを。

 


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