Podcastラジオ『熱量と文字数』第304回 2018年12月配信・ブヒ部
アニメキャラとの妄想デートのコーナー採用
ヤマノススメ サードシーズン ED「色違いの翼」(TVサイズ) 1080p 歌詞付
タイトル「『ヤマノススメ』の楓さんと山登りに行く」
大菩薩峠と書かれた標識に着いたのは、ちょうどお昼を回ったころだった。
空には一面のうろこ雲が広がっていた。
僕たちはその辺の岩に座って、お昼ごはんにすることにした。
「楓さんって、山で料理とか作ったことあります?」
僕はお湯を沸かしながら、そう聞いてみた。
「私、そういうの苦手で。いつもこれかな?」
そう言って、カエデさんはザックからアンパンを取り出して見せた。
「一人で来るとそうなりますよね」
僕は笑ってコンビニで買ったおにぎりを見せた。
二人で山の麓から広がる森と大きな湖を見ながら、カップヌードルとおにぎりとアンパンを食べた。
楓さんは湯気で曇った眼鏡を服の裾で拭いていた。
風がだんだん冷たくなってきたので、ゴアテックスの上着を着た。
「これ、食べる暇なかったわね」
そう言ってカエデさんが、おやつのモンキーバナナをくれた。僕は代わりに、ジップロックに入れてきた板チョコをあげて、二人でデザートの代わりに食べた。
殺風景な山頂にタッチして尾根沿いの道に戻ると、雲が晴れていて右手に青々とした富士山が見えた。
「うわー、いい景色ねー」
しばらく立ち止まって風景を眺めた。
ばんざーい。僕が冗談で小さく万歳をしてみると、カエデさんも一緒になってやってくれた。
ばんざーい、ばんざーい、二人で富士山を見ながら万歳をした。
隣りの登山客のおじさんに笑われた。
それから尾根伝いにしばらく黙って歩いた。
来るときは気づかなかったが、丘の上からこれまで歩いてきた道がはるか遠くまで見通せた。
暮れかけた日の光を浴びて金色に光る丘一面の笹の葉が、風に吹かれてさざ波を立てていた。
前を歩く楓さんの髪が揺れていた。
最後の山道に入った頃には、辺りはずいぶん暗くなっていた。
少し経つと、白樺の林の先にゴールである面白い名前の山荘が見えてきた。
「あ、楓さん見てください。あれ、赤軍派が警視庁襲撃しようとして、たむろしてた小屋ですよ。ヤバくないですか!?」
と、疲れてうっかり口が滑りそうになったが、なんとか踏みとどまって、代わりに、
「楓さん、下に着いたら温泉に寄っていきません?」
と言った。
するとカエデさんは振り向いて、
「私もちょうど今それを考えてたとこなの」
と言って、恥ずかしそうにほほ笑んだ。
完