※ ラジオ『二次元妻帯者の夜Hz』の『ひぐらしのなく頃に』トーク回
※ ネタバレ注意。
みなさん、こんにちは。
私が『ひぐらしのなく頃に』を見たのは、テレビでの放送が終わって、しばらくしてからのことでした。当時、私は大学4回生か就職浪人をしていた頃で、『涼宮ハルヒの憂鬱』で萌え絵のアニメに開眼した私は、あれこれと手あたり次第にアニメを見ていました。
すると、ビデオインアメリカというレンタルビデオショップのアニメコーナーの棚に、ホラーアニメとして、とあるアニメが紹介されていました。
その紹介プレートには、かわいい女の子の絵が描いてあり、彼女はまるで、これからチョコレートでも渡そうとするかのように、もじもじとした感じで後ろ手にナタを持っていました。
私は軽い感じで借りてきました。
私は割とホラーを見るのが好きな方なので、ちょっと見てやるか!という、そのときはかなり舐めていた状態だったということを、あらかじめここに告白しておきます。
そしてあれは、夕暮れ時。
あの日は、北側の窓にきれいに夕日が差していました。
家に帰って、借りてきたDVDをPS2にセットした私は、ご機嫌で再生ボタンを押しました。
私はホラーを見ようとすると、どういうわけか大抵いつもご機嫌になるのです。
すると、開始そうそう、暗闇でドシャ。グシャという音がして、バッドで人を殺している姿が映ったので、お。やってるね。と思いながら見ていると、都会から一人の転校生がやってきました。
そして、その転校生の男の子が、田舎に住む女の子たちと仲良くなり、ひたすらキャッキャと、よくわからないテンションで遊んでいる姿が延々と映りました。もしくはカーネルサンダースを持って帰りたいなどと言っていました。
このあたり、当時の私はまだ萌え絵のアニメの初心者だったので、いささか退屈で、うーん。なんかこういうのはやはり、こども向けの教育番組みたいだな。などと思ってかなり油断していたのをよく覚えています。こういうメープルシロップみたいな脳がとろけるやつは、『できるかな』のように見えていたのですね。
それからも、のんびりとお祭りのシーンで、余ったふとんやなんかのワタを川に流すなどやっており、へー。お盆にナスとか流すやつみたい。などと、私はこの少年の目線でこの村を観光しておりました。
しばらく見ていると、ようやくダム工事で揉めたとか、ごみ処理場で人が死んだとか、人が祟りで消えたらしい。などといった話がどんどん出てきて、ようやくホラーっぽくなってきたな!と思いました。
しかし、見れども見れどもただ真綿で首を絞められるがごとき圧倒的不可解さを増幅させるばかりで、肝心のホラーが起こりません。
するとある日。
警察が私を訪ねてきて、あなたはこの村の唯一の外の人間だから、捜査に協力してほしいと頼まれました。何を?この村はなにかを隠している。住人たちを見張っていて欲しい。わかりました。これでようやくこの村の秘密に迫れるぞ!とワクワクして見ていました。
しかし、それから先も、やりたくもないスパイみたいなことをやらされるだけで、何も謎に迫ることができず、警察もべつに何もしてくれません。そして、悪いことをしているつもりはないのに、一緒にいた友達を裏切っているような状態が延々と続きます。
自分で色々調べてみようとしても、不穏なうわさはべつの不穏なうわさにつながるだけで、一向に話の全体像がみえず、気持ちばかりが焦ります。
私はだんだんと疑心暗鬼になってきました。この村はやはりおかしいのか?
昨日までふつうに楽しくやっていた人たち、新しくできた友達たち、明るい未来が見えてきていたものたちが、いっきに遠ざかり、自分が絶望的なまでの部外者であり、内輪になど、まるで入れてもらえていなかった気がしてきました。自分がいじめを受けている可能性をずっと否定しているような、事実を認めたくないような、そんな気分。
そして、村の人たちに隠れて警察に相談するために乗っているパトカーも、誰かに覗かれているような気がしてなりません。強迫観念なのか、それとも事実だれかが覗いているのか。
それに、ちょっと前まであんなに可愛かった、キャッキャと言って一緒に遊んでいた村の女の子は、いまでは私に対してまったく心を閉ざしてしまいました。なぜだ!理由がわからない!
こっちは何もしていないのに!
次第に彼女は、きわめて冷淡な口調で一つ一つ私に質問をしながら、遠回しにこちらを追いつめてくるようになりました。
おそらく警察と内通してあれこれスパイ活動をしていることは、全部バレている!でも口止めされている以上、こちらから打ち明けるわけにはいかない。警察から聞いた話を知っていることがバレたら、場合によってはただじゃすまされないぞ!
そして、その日。
田んぼのなかの一本道という、ある意味で密室のような逃げ場のない状況のなかを、いつものように、私はその女の子と一緒に歩いていました。
そして例によって冷たくて重い、いつもの口調で色々とこちらを問い詰めてきます。
今日はいつにもまして聞かれたくないこと、疑われたくないことを、するどく質問してきました。
また異様な重々しい空気が流れます。
それでもまた、なんとかしらばっくれようと、
「いや、隠していることなんか、ないよ」
と言ったのですが、次の瞬間、あれだけ大人しかった彼女が、これまでとうって変わって急に鬼のような形相になると、
「ウソだー!!!」
と、こちらに向かって絶叫しました。
その声に驚いて、バサバサバサーっといっせいに羽ばたく鳥たち。
これが本当に怖かった!ドキーッとしました!
震えあがったと言ってもいい!
私はその日の夜、寝入りしなにベッドでウトウトしていたとき、このシーンが急にフラッシュバックして、身体がビクーッとして目が覚めたのを、昨日のことのように覚えています。完全にあの田んぼのシーンを夢に見ました。
あの授業中に居眠りしていて、ガタッとなるあれですね。
起きてまだドキドキしていたので笑いました。
これが私の『ひぐらしのなく頃に』です。
もちろん、これはあくまで私の記憶なので、実際に見直したら違うと思いますが、こんな感じでしたね。
さて。しかし、私はなぜそんなにびっくりしたのでしょうか?
おそらく私は相当油断していたのでしょうね。
いろいろとホラー映画とかの展開を知っていたので、そのどれかだろうと思って見ていたところを、突然横からぶん殴られたとでも言えばいいでしょうか。
ほら、ハンターハンターでヒソカが誰かを攻撃するところを狙うゴンが、攻撃に成功した瞬間に、自分も別の誰かにやられてしまうという話がありましたが、あれと同じ構図ですね。見ちゃいけないものを見ているところを、見たなー!と言われるとか、こういう風に怖がらせてくるだろうと無意識に予想しているところを思いっきり刺されました。
正直な話、これまで見たどんなホラーよりもビビりました。
『悪魔のいけにえ』よりビビりました。
次にやっぱり、えー!この絵柄でこれやるの?というギャップが強かったです。
あんだけかわいいかわいい、爆闘がどうのこうのとキャッキャ言ってた女の子が、全力で絶叫したらそりゃ怖いですよ!そんなに激高されるほど、私は何をしてしまったのでしょうか?そんなの、この子にだけは絶対言われたくない!だって、それを言われた時点で、ここでの私の生活はおしまいになるんですよ!?
実際問題、これを見ていたおかげで、あとになって『魔法少女まどか☆マギカ』というアニメを見ていたとき、とある女の子が化け物に食い殺されるシーンがありましたが、まあ戦ってりゃそういうこともあるだろうね。と普通に思いました。その点、『ひぐらしのなく頃に』はまだ戦ってすらいないのに!
あのセリフは、どんな殺し方よりもひどい殺し方です!
さて、それから先もこの作品は、ずーっとこの不気味な雰囲気のまま延々と続くという大変素晴らしいものでした。え!?何これ?『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』だったの?とか、え?ミステリーだったの?とか、マジかよ、オムニバスなの?時系列はどうなってんの?などと、本当に奇跡のようにずーっと面白かったです。
そして、最終巻まで借りると、?え?これで終わり?ただのスナッフ・ムービーだったの?と思ってびっくりして、ようやくネットで調べてみると、そこに『ひぐらしのなく頃に解』放送の文字があるではありませんか!いやーその時は、本当に幸せでしたねー!
しばらくして、満を持して放送された『ひぐらしのなく頃に解』は、DVDレコーダーを持っていなかったので、全部ビデオに標準画質で録画して見ました。オープニングが始まる直前のCMで、ここだ!っと思って録画ボタンを押して、録りながら見てましたねー。いやーその頃は本当に毎週楽しかった!
普段グッズなんか全然買いませんでしたが、おやしろさまカルタ、みたいなやつをゲーマーズで買ってきて、一人でベッドに並べたりしていました。「と」、「富竹死んじゃう綿流し」みたいなやつを。
それで、解を見終わったか後だったか、同時期だったかに、『うみねこのなく頃に』のゲームを買ってきてやりました。これまた個人的には、メタがどんどん過剰になって、くらくらしてくる感覚が非常に好きでした。でも知り合いに勧めたら、最初の2話くらいしかやってないのに、やっぱりひぐらしが最高傑作だよ!とか言われて悲しかったです。1話なんて完璧だと思ったがなー。
どちらも、謎が解けるのが目的とか、惨たらしい死に様だけが凄いとか、そういう作品でないと思います。やはりそこまでの謎の提示部分、くらくらするような迷路をさまよう感覚が本体だと思っていますが、いかがでしょうか。
そして、アニメひぐらしに関しては、本当にトライ・アンド・エラーを繰り返して、何度も何度も死を乗り越えようとして、みんなが協力することで、少しずつ事件の本当の姿が明らかになって、ついに絶対的な死を乗り越えるという描き方が大変面白かったですし、とても感動しました。
ゲームデザイン的なループものというよりも、仏教的な輪廻転生という感じがしましたね。
ところで、今こうしてあらためて思い出してみても、私のいちばん好きなキャラクターは、最初にビデオ屋でみた女の子『竜宮レナ』で変わらないですね。
この作品は、一人で悩まずに、誰かに相談しよう!がテーマの一つでしたが、彼女がたった一人きりで、全世界を敵に回してもなお戦おうとする姿は、本当にカッコ良かったです。
序盤で私がログインしていた前原圭一と、逃げ場の完全になくなった分校の屋上で対決する話がありましたが、あれはあれで間違いなくハッピーエンドのひとつだったと私は今でも思っています。
さて、それでは今日はこの辺で終わりましょうか。
それではまた、何かのなく頃にお会いしましょう。
それでは最後に一曲聞いてください、島みやえい子で『奈落の花』。